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2024-07-07

Vision Proの空間コンピューティングはとても楽な体験だった #13

日本でもVision Proが発売され、Apple Storeで体験できるようになったので早速表参道のストアで体験してきました。結果、空間コンピューティングはかなり良いものだという感触を得ました。

なにより操作が楽というのが第一印象です。この「楽である」ということはAppleがかなり意識しているところだと思います。Appleのエコシステムに入ってしまえばデジタルライフが楽になるというのは近年のApple製品の大きなセールスポイントですし、人間というのはどうしても楽にことを済ませたい生き物なので、この「楽さ」が今後空間コンピューティングが普及する上での大きなファクターになるのではと思いました。

では、なぜ空間コンピューティングは楽なのでしょうか?いくつか思いついた点を挙げてみたいと思います。

まず、仮想的なスクリーンを目から遠く設置できるということが挙げられます。スマホや本は言わずもがなですが、現代のコンピュータディスプレイも設置位置としては目から近すぎると常々思っています。目のすぐ近くの文字を読むということは今でこそ当然のことになってしまいましたが、人類は何百万年もの長期間を狩猟採集を生業として遠くの獲物を見つけられるように進化してきた生物なので、これは実はかなり不自然なことかもしれません。実際顔から50~80cmくらいの距離でディスプレイを見ながら仕事をした後は結構目の疲労を感じますし近視の原因にもなります。

しかし遠くにスクリーンを設置するとスクリーン上の文字などのオブジェクトは小さく見えてしまいます。そこでオブジェクトを大きく表示したいのですが、そうすると必然的にスクリーンに表示できる情報量は少なくなります。空間コンピューティングではなく通常の物理ディスプレイでこれを解決しようとするととても大きなスクリーンが必要になるため消費者向けとしてはコスト的に現実的ではありません。Vision Proのようなデバイスは仮想スクリーンによって現在の技術でこれらの問題を現実的なコストで解決できるものと考えられます(と言っても60万円はまだまだお高いですが)。

またアイトラッキングの精度が高く、目で見たものを親指と人差し指を輪にしてタップする動作がとても楽です。Macのポインタもアイトラッキングで動かせたらトラックパッドの上で指を滑らせる必要がないのになぁと思っていたのですが、Vision Proで一気にその方向にUIが発展したのは驚きでした。

コントローラーやトラックパッドに手を触れて操作する必要がないというのも大きなポイントだと思います。人間の手というのは敏感な器官で、何かに触れているとそれだけで疲れてしまいますのでその疲労が無くなるのは大きいです。

そして、手を膝やテーブルの上に置いた状態でも操作できるUIでゴリラハンド問題を解決していることが極め付けですね。これはコントローラーを作ることでも解決される問題だと思いますが、あえてコントローラーを作らずハンドトラッキングだけで実現したところにAppleの凄まじいほどのこだわりを感じます。

ところが、この楽なUIを高度に実装しているはずのVision Pro、店頭で試した限り20分程度でもかなり疲れてしいました😅
この疲れは上記のUIに起因するものではなくデバイスを装着する際の締め付けと、パススルー映像の荒さと若干の遅延によるものです。あわよくば仕事用ディスプレイの置き換えをば、と考えていましたが今のところは時期尚早なようです。
もしVision Pro向けアプリを作っていたり経済的に余裕があるのであればぜひ買って未来のコンピューティング環境を堪能したいのですが、当分は所有者の皆さんを横目に見つつ将来の空間コンピューティングハードウェアの登場を楽しみに待ちたいと思います。
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